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『日本よ、アニマルマインドを失うな』

衆議院議員 国家公安委員会委員長  内閣府特命担当大臣[ 消費者及び食品安全]拉致問題担当  ( 前国土交通副大臣) 松原 仁 聞き手/一般社団法人 国際経済交流協会 代表理事 米田建三    (2012年4月発行World Navi)

政治、経済、文化の全般にわたってめっきり力を落としている日本。しかし本当に、日本の将来は希望がないのでしょうか。国家経営の根幹にかかわる国土交通副大臣を務められ、現在は治安の責任を双肩に担われる松原国務大臣は、日本がそのフロンティアの可能性に目覚め、政治家が国家観を力強く語り、国民にアニマルマインド、夢、野心、誇りが湧き上がってくれば、再び「燃え上がる日本」が蘇る、と語ります。

『日本の発展のための国土交通行政』

米田 私たちは、党派は自民党、民主党と異なりましたが、本来的に政治家の課題である国家の重要事項、例えば、政治改革、領土問題、拉致など、ともに取り組んできましたね。今日はいわば同志として、お話しを伺おうと思います。  松原大臣は、第一次野田内閣で、国土交通副大臣に就任されました。国土保全、必要十分で円滑な交通の確保、という課題は国家の治安にも直結しているので、改造内閣で国家公安委員長になられたことも、自然な流れと思います。

 国土交通省は、これからの日本の発展のために、重要な役割を持っていますので、まず、国土交通行政について、お考えを聞かせてください。

松原 私は国土交通副大臣になった時に二つのことを考えました。一つは、日本国の活力をどう挙げるか。もう一つが海洋国家としての日本の利点をどう発揮するか、です。日本国の海洋面積は440万㎢を超え、世界第6位です。国土は38万㎢で小さいけれど排他的経済水域は大きい。人間っていうのはやっぱりフロンティアがないとワクワクドキドキしない。

米田 私は自民党政権の中で政府の役職を経験してますが、民主党政権が今いろいろ厳しいことを言われてるけど、しかしポイントポイントを見た時に自民党政権が踏み切れなかったことに結構踏み込んでる部分もあるので、その意味では評価してるんです。例えば最近海底の開発を打ち出したでしょう?

松原 メタンハイドレード問題など始めていますよ。

米田 海底にはいろんな物があるんですよね。民主党政権が、日本の海底資源の開発に、日本の金、日本の技術を投入する、と高らかに宣言する。これは国民に希望を与えることだと思いますよ。

松原 米田先生とは一緒に尖閣諸島問題に取組みましたが、日本にある99の国境離島をきちんと確保しなければいけません。例えば東シナ海ガス田の問題がありますが、ちゃんと視察するべきだという意見があって、男女群島視察を昨年12月に、当時副大臣の私だけではなくて、山谷えり子参議院議員が会長をやっている、日本の領土を守る議員連盟( 領土議連) で行いました。

米田 あの議連は私が大学教授の立場で顧問として関わり、最初の会長は奈良の森岡正宏代議士( 当時)。

松原 私は初代事務局長でしたが、今回最高顧問に平沼さんを入れてるんです。平沼最高顧問、山谷会長、長尾事務局長。たちあがれ日本、民主党、自民党3党合同の10人で海上保安庁の飛行機で行きました。 政府の飛行機で副大臣が視察するってこともそうそうは無いんだけど、更に超党派の議員が10人乗って行ったというのは、最初だったと思います。  こうやって海洋フロンティアをきちんと確保して、先生がおっしゃったメタンハイドレードの実用化なんかもやる。そうすると、フロンティアで日本が生き生きとしてくる。夢があるんだ、野心があるんだ、誇りがあるんだ、縮み志向ではなくて打って出られるんだ―こういう燃え上がるものが日本にはあるんだ、と言える。 そのためにも、中国の漁船が不法操業をしたら、議連で視察する。米田先生が作った議連ですけどカウンター的な行動として必要だと思い行動しました。

米田 是非頑張ってください。

松原 もう一点申し上げたいのは、国土の均衡ある発展は非常に重要だが、同時に、世界的競争力を日本が持つには、東京を含む首都圏の活力ってもの凄く大事だということです。  人間はどういうとこでテンションが上がるか、やる気が出るか。都市が改造されるというのは、そういうエキサイティングなことの一つだと思うんですよ。  例えば上海。都市が熱気に溢れてるんです。ベトナムのハノイへ行ってもそうです。「燃え上がるハノイ」といった感がありますね。 確かに貧しい。でも熱気がある。それに引換え我々の東京は熱気が無い。

 東京という日本の首都において、東京オリンピックの時に、かなり急いで景観も大して配慮せずに突貫工事で造った首都高がまだ全部そのままです。これじゃ沈滞します。  そこでまず平成23年12月に、私が副大臣として東京外環自動車道の再着工を決断しました。まずこれから入って、沈滞していた都市活力を吹き出させようということで着手したのです。  国交省的には、もうちょっとどうかな、というのがあったんですが、後ろ向きになるのではなく、どんどん前に出てやるべきだ、国土交通省が元気になるべきだ、国土交通省が元気になれば日本も変わる、と考え決断しました。

米田 私は年4回ほど常に海外に視察に出ています。半月くらい居るんです。そのたびに痛感するんです。空港の視点から見るとこのままでは日本はローカルカントリーになりますよ。今回ドーハを使いましたが、あれはもう真夜中でも空港が開いている。ところが成田は夜帰り着いて夕飯食べに店に入ったら、21時に閉めちゃうから急いで食ってくれっときた。これじゃ話にならん。成田が難しければ羽田を24時間化しなくちゃいけないと思いますよ。  私が北海道開発庁総括政務次官の時、拓銀が潰れて北海道経済がガタガタになった。その時、北海道開発庁の幹部を叱咤激励して「机に座っている場合じゃない、皆で営業に回ろう」って言って在日アメリカ商工会議所の会頭に会いに行った。次に台湾の代表にも「北海道に企業進出してくれ」と頼んだ。ところが、両方とも答えは同じ。「まだ時期尚早」と。理由を聞いたら、「なぜ24時間オープンの空港、港湾を作らないんです」と言われてしまった。北海道だったら特にヨーロッパ欧米航路は1時間も短縮になるので、燃費だけでも全然違うわけです。 そこで私は24時間化を政府に提言した。そしたらボツ。早い話が、馴れ合いでマイナス方向の護送船団なんだ。例えば関連企業に夜も、というと労働組合に聞かなければ、という。では夜やる会社を作らせるよ、というと反対。俺たちのシマにヨソ者は入れない。

松原 この議論は大事です。国際標準に達していないと国際標準クラブに入れない。そして国際標準的なクラブに入らないと、

米田 相手にされない。物流でも情報でも同じ。神戸なんか10位に下がっちゃったもん。

松原 下がってしまったが故に今度は24時間でコストが見合うのかという話になってしまうんです。非常にいろいろな議論があるけれども、米田先生がおっしゃった部分は凄く重要なことですね。

米田 日本が「ライジングサン」で物凄く発展した筈だったのが、何故かいつの間にかどんでん返しになって、いろんな分野で国際標準から遅れた国になってしまいました。これはやっぱり何とかしないと。

松原 港湾も飛行場も少なくとも中国や釡山と同じような水準でないといけない。範疇は違うのですが、法人の立地優遇制度も同様です。例えば韓国は5年間法人税をタダにするんです。日本の特区は土地取得税を半額にする程度で、法人税を半額にするとかゼロにするとかは無いんです。こういうものは我々からすると依怙贔屓、不 平等なんだけど、中国でも韓国でもやっていて、それによってどんどん企業を呼び込んでいます。こうなってくると、東京都が決断すれば、法人税の東京分は無しにできる、といった国税部分の地方分権論が出てくるかもしれない。

米田 国家的見地からこの地区をこういう風に持っていこうと決めたら、税のインセンティブを設ける。 いい例が東北復興で、宮城県知事が特区を要求してるから、どんどん中央政府が認めればいいんだよ。

松原 既に報道もされているので挙げますが、東レが飛行機すらつくれる炭素繊維を開発しています。まさに垂涎の的の技術です。これを韓国は特区で5年間法人税無税だから、と誘致しています。

米田 行っちゃうね。

松原 でも行ってしまったら、韓国も欲しくて欲しくてしょうがない技術だから。こういうものを我々は安直に出していいのか。

米田 出すべきじゃない。安直に出させない代わりに企業は生きてかなくちゃいけないから、日本も便宜をはからなければ。

松原 国際標準というのは、交通、物流、情報などの分野での議論と同時に、他の国がやっているような制度戦略に対しても、レベルを合わせていかなければ、と思うんです。

米田 全くその通りです。総合的な対策が必要です。今の話でいうと、24時間空港にしたならば道路、鉄道、航路から入管、税関を含めて、全部体系的に整える必要があります。 そうしたことによって、フロンティアがあるすばらしい国に再び作り直す時間的な余裕はまだあるでしょう。 ただこれ以上延々と引き伸ばしたんじゃもう未来はないと思います。所管が変わったとはいえ、国務大臣( 閣僚)というのは政府の政策全体に連帯責任をお持ちなのですから、是非引き続き国土交通行政についても関心を持って頑張っていただきたい。  さて、大規模災害などに際しての、インフラの安全を民間企業だけに任せておいていいのかという問題がありますね。ここは国家がしっかり関与しなければいけないのではないか。自民党の憲法改正原案には総理の非常権限がありますが、こういうこともきちんと整備しないといかんのではないですか。これは国家公安委員長、すなわち国民の安全を守るという最も重要なポストに関連すると同時に、国土交通行政とも関連する部分で、私はそういう意味で連続しておられると思うんだけれども。

『国民の安全を守り、且つ理解を得られる憲法改正を求める』

松原 憲法の中味をどうするかというのは私の立場で今なかなか語れないですが、かつて議論として私もそういったことを言っていた時期があります。日本列島は三つのプレートのせめぎ合っている上に載っています。地震多発という、そういう危険のある地盤の上にいる災害大国である以上、その対策を法的に整備する必要があるという議論は、一定の理解を国民から得られるのではないでしょうか。

米田 例えば都道府県知事に対して総理が単に指示するだけでいいのか、指示に従わない知事がいたらどうするんだ、避難指示に従わない住民がいたらどうするんだ、と考えると避難命令できっちりやるべきです。国会だっていちいち開会していられない場合は政令でやれるようにする。あとで国会承認は必要だけれども。こういう非 常権限はどこの国だってあるでしょう。

松原 法的に担保されているところといないところがあると思いますが、日本の場合は、国民も理解するんじゃないかと思います。

『中小企業に対しての配慮』

米田 さて、少し具体的な話をしてみたいのですが、私共の社団法人の会員には道路関係、運送関係も多いんでお聞きしたいことがあります。高速道路の問題なんですが、ご存じのように、料金の割引制度があります。ETCの割引制度です。大手の会社は単独で割引を受けられるけれども、中小はそれができない。その場合は協同組 合を作れば宜しい、ということで、当社団のメンバーにもそうした協同組合がいくつかあります。協同組合は支払を保障する上に、組合員の法令順守も督励しているんですね。  さて、組合は利用額に基づいて保証金を積まなきゃいけないのですが、利用額が減ってきても、減額や払戻しがないんです。また組合の信用度による扱いの差もない。もう少しきめの細かい対応はできないか、と思うのです。  日本は中小企業が多く、それらが自主的に組合を作って大手に伍してやっているところに対して、もうちょっと配慮があってもいいんじゃないかと思うんですが。副大臣時代にこういう問題に関心持たれたことありますか。

松原 これは扱いましたよ。副大臣時代にこの制度に関してはいろいろ議論があったことは記憶してます。運送事業というものは物流日本の国際的地位を守るを血管に例えると、その中を走るヘモグロビンみたいなものです。 そういう事業者が元気に活動できるということは、経済が、ヘモグロビンがたくさんある身体同様に活発であるわけですから、大変大事なことだと思っておりますので、テイクノートしてしっかり考えてみたいと思います。

米田 なんと言っても日本は9割が中小企業ですからね、中小企業が元気にならなきゃどうしようもありません。けっこう高速道路を使うような車を持っている企業にとっては重大な問題なんでね。

松原 かなり重大な問題だと思います。高速道路が動く駐車場ではなくて、きちんと走れる道路になる必要があります。ですから先程申し上げたように外環自動車道の再着工や、今年1月に入ってからは名古屋二環も含めて、一時凍結していたものを全部解禁しました。東京都の物流の血管を繋げる作業は今始まりました。一定速度で走れればコストも安くなる訳ですから、いろいろな意味で貢献できるようにして行きたいと思っております。

米田 引き続きご検討願えればありがたいと思います。

『日本の国際的地位を守る』

米田 さて国家公安委員長に就任されて、政治家としてのあなたのライフワークのひとつである拉致問題の解決にも取り組まれていると思いますが、この解決のためにも、国家機密の保護は大切ではありませんか。  本当にやっと議論が始まった、という感じです。日本は治安は世界の中でもいい方だが、残念ながら国家の機密、企業の機密は全部ザルではないかとずっと言われて来ています。これでは同盟国だってうかうか日本に情報も流せないだろうし、それから企業の場合は経済活動に大きな損失を被ります。このへんのところで伺いたいんですが。ここでも国際スタンダードっていうのは大事と思いますが、いかがでしょうか。

松原 米国は敵対している国に対して情報漏洩した場合の最高刑は死刑です。日本は、このたびの法改正でも10年。防衛情報を漏洩しても10年ですよ。  同盟国同士でも、情報は2種類ある。ひとつは同盟国であっても出せない情報。もう一つは、例えばテロに対して共通戦線を組もうといった場合は、同盟国とも情報を共有する。しかし後者の情報さえ今の日本に出せるのか。量刑の違いから、一番重要な機密は出せないという判断をさせてしまう可能性があります。どうやったら我々 は情報を同盟国として共有しうるかというのは、インテリジェンスの世界では非常に大事な議論です。これを共有できないと日本の国際的な地位も低下します。

米田 民主党政権の国家機密保全法案は平成23年に出た有識者懇の答申に基づいていると認識しています。報告書には私も目を通しましたが、今おっしゃるように罰則が国際スタンダードではない。  国を転覆させるような機密を漏洩してもせいぜい懲役10年だという罰則の問題。もうひとつが、何が機密かという指定が、事実上各行政機関の担当者の選択に委ねられている。しかしこれは中枢において決定すべきです。馴れ合いではそこから漏洩が生じます。   また国会議員については自主管理に委ねるような規定ですが、アメリカだろうがどこだろうが、国会の秘密委員会で、重要機密が明らかにされる場合は、参加議員は責任を持って秘密を守る義務があるというのは常識でしょう。こうした重要な点が欠けています。これは大臣として「うん、そうだ」という風にはお答え難いかもしれないが、政府内部でもっと煮詰めないと国際スタンダードには達しないのではないか、と思うんですけれどもね。

松原 日本の国会議員がアメリカの国会議員と話す時に、向こうはどこまで情報を出すかという事とも絡んできます。岡田克也副総理は3月2日の記者会見で、「与野党の限られた議員が、外交機密を共有しながら議論することは必要だ。当然、守秘義務をかけるべきだ。」「国会議員に守秘義務を一部課すのは私の持論だ。外交案件の機微な情報を共有する野党議員には、公務員と同じような守秘義務をかけるのはおかしなことでは全くない。」と述べています。国際的なルールを想定してのご発言かと思ったりもしていますが、米田先生がご指摘になった部分を含めて、議論を深く掘り下げていく必要があります。

米田 是非お願いします。民主党政権は時々いいヒットを飛ばすなと思わせたことの一つで、自民党政権では話題になっても全然実現しなかったことです。

松原 頑張ります。

『国が体制を作る企業機密保護』

米田 もうひとつ大事な点として企業機密の保護があります。各企業がどうやって、企業利益だけでなく国益にも直結する機密を守るのか。サイバー攻撃なんかすごいでしょう。

松原 すごいですね。

米田 当協会の会員には企業経営者が多く、その声を聞きますと、もう一私企業だけでは手に余る状況です。国が包括的な政策を固め、技術も制度もしっかり準備し、企業を強力に指導するような体制をとってくれないと、自助努力だけでは防ぎきれないという声が出ています。

松原 おっしゃる通りです。既にサイバー攻撃にあったこともあり、警察庁も関係する企業との協議も含め様々な備えをやっています。サイバー攻撃に強い国家になろうとしています。  アメリカはサイバーの世界は第5の戦場と言っています。陸、海、空、宇宙、そしてサイバー。この緊張感を共有しなければ同盟国としては不十分です。その辺の認識がまだ足りません。予算は昔から計上していて日本は案外とやってはいるんです。ところが少しずつで金額もさほど大きくない。アメリカはここ数年で巨額の予算を投下しています。日本もアメリカ同様にターゲットになっているのですから、アメリカのやり方に学ぶ必要もありそうです。

米田 さてこれも国家公安委員長としての職責に絡むのですが、当協会の会員と話していてよく話題になるのが、治安の悪化です。我々子供の頃には考えられなかったような、親が子を殺す、子が親を殺すなんていうのが、あっちこっちで起きているし、いわゆる猟奇的な犯罪や、外国人の犯罪も増えています。

松原 社会が病んでいるんです。ストーカー事件なども次々に起こっていて、警察部内でこれまで以上に横の連携が必要だという話をしています。治安の維持向上のために、警察官が沢山いてパトロールするなどの必要はあるでしょう。しかし私は政治家が夢を語ってね、ひとつの方向に向かって走るっていうことをしないと、病んだ社会 は治らないと思うんです。冒頭に戻りますが、やっぱりフロンティアを語って、例えば海洋フロンティアという胸躍るものに向かっていく躍動をつくりだす。先ほど「燃え上がるハノイ」と言いましたが、貧しさはあっても猟奇的な病んだような犯罪はないんです。これは社会に活力があるからだと思うんです。  2年ぐらい前にフィナンシャルタイムズやウォールストリートジャーナルの記者と話した時に、彼らが言ってたんですよ「我々は日本が心配だ。他の国は心配していない。」というから「うちは人口が減ってるからでしょう?」と聞いたら「違う。日本人はアニマルマインドを失ってる。これがあれば心配しないんだ。」って。また私の知人の一人で、フランスの投資会社の日本社長をやっている人が言うんです。「日本の空気はうまい、水はうまい、食事もうまくて大好きだ。だから俺は日本の社長をずっとやっている。ただひとつ物足りない点があるんだよ、松原さん。 我々も仕事やるんだったら野心のある奴と一緒にやりたい。日本人は野心がある奴が他に比べて少ない、少な過ぎる。韓国行ったらはったりを含めてみんな野心がある。アメリカもそうだ。いや、どこでもそうなんだ。ただ日本は何かね、やたらとこじんまりとして野心がないのが多いと思う」と。

米田 おっしゃる通り。

松原 病んだ犯罪を出さないためにも、政治家がひとつの国家観を出して走っていかないといけないと思います。

米田 私が海外で必ずやるのは、その国のテレビのチャンネルを全部ひねるの。ニュースそれからCNNやBBCやいろんな番組を全部見ます。日本の登場頻度が行く度に減って、日本が地盤沈下していく。中国・韓国ニュースはあっても日本のニュースはほとんどない。

松原 やっぱりアニマルマインドの欠如が原因ですよ。

米田 これは教育もありますね。あの戦後教育。競争がいかんことのようなね。みんなで手繋いでゴールインとかね。

松原 教育もあるけども、やっぱり一番は国家がどういうフロンティアを設定するかだと思います。海洋フロンティアがあるんだから、みんな海へ行って頑張ろうって。海が全てとは言わんけども、そこにフロンティアの一つがあるというのは日本の強みだと思うので、頑張ります。

『国際的経済犯罪への対処』

米田 もうひとつ重大なのは経済事犯。すさまじい事件が連続してるじゃないですか。オリンパスしかりAIJ投資顧問の事件しかり。タックスヘイブンを利用した大掛かりな国際的経済犯罪が起こる時代に、警察としてはどう対処しますか。

松原 そうした犯罪には関係する府省と連携して、フェアな社会を作るためにきちんと対処していきます。  私はこういう犯罪が生まれるのは、国家に国民に対する求心力がないからだと思うのです。国家と自分が一緒にあるという、強いプライドというか自意識があれば、こうした犯罪は起こらないだろうと思うんです。個人主義を徹底するんじゃなくて、「国家と共にある個人」であるべきではないか。  少し話が変わるんですが、私の知り合いに個人納税額ではその地域で一、二位を争う人がいます。 その人が言うには「松原さん一番取るっていうのは男の喜びだ。納税額の順位の発表がなくなって本当に悲しい」と。  節税してそういうのを出したくない人がいる一方で、「俺は一番だ」ということをプライドにしたい人がいる。だったら少し捻りを加えて、どこそこ地区ごとで納税番付を発表する。 米田 金額入れないで?

松原 金額入れてもいいです。そして納税額1位になった人には金メダル、2位は銀メダルと。納税勲章みたいなものを制定して、その功績を称賛表彰する。  下品な話だと言う人はいるかもしれない。けれども「金儲けしやがってこの野郎」といった嫉妬心に媚びるんじゃなくて、「一番か。金メダルか。凄いな!」という風な社会の在り方も必要だと思うんです。ただ、いまこういうことをやるとその家に賊が入ってしまうから難しいけれど。

米田 やたらに寄付の要請とかね。最後になりますが、警察官の処遇について伺います。自衛官にも似たところがありますが、規律が厳しいところで頑張って治安の維持にあたってきて定年を迎える。その再就職ですが、警察で培ったノウハウは世の中のために活かせる部分が沢山あると思うんです。住民相談など現職の警官だけじゃ手に負えない部分を、退職した警官が当たるといった方策の検討はないんですか。

松原 例えば、文部科学省で小学校・中学校で柔道、剣道といった日本武道を学ばせようとしています。これをOBの元気な警察官が担うというのはあっていいと思います。武道っていうのは子供がものを考える基本になります。強靭な肉体に強靭な精神が宿るというのは、真理ですよ。体が強い方が物事を決定する時に自信持っ て決定できますね。

米田 警察官は柔・剣道両方やっているから、なかなかいい案ですな。全国的に武道指導員という形で、規律ある組織でいろいろ経験を積んだ人材を活かすということも公安委員長の大事な仕事のひとつですね。

松原 高齢化社会の中で元気な60代70代が沢山います。今までにない「世代的なフロンティア」というものが生まれるんじゃないかと思っています。こうした検討を多岐にわたってやっていきたいと考えていますので、またよろしくお願いします。


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