医療全般の臨床研究に係る制度の在り方への私見
「臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会」が発足されたのは、つい最近の
臨床研究に関する次の不適正事案3案件による。
1案件;平成25年の夏、ノバルティス社の高血圧症治療薬ディオバンに係る臨床試験においてデータ操作等があり、試験結果の信頼性や研究者の利益相反行為等の観点から社会問題化。平成26年1月、ノバルティス社を薬事法の誇大広告禁止規定違反の疑いで、刑事告発された事案です。
2案件;平成26年7月、またも同社は、白血病治療薬タシグナに係る臨床試験において、全ての患者データがノバルティス社に渡っていたことが明確になり、実質的に、ノバルティス社が深く関与していたことが明らかになった。
薬機法の副作用報告義務違反について、ノバルティス社に対し業務改善命令が出された事案です。
3案件;この案件は、CASE-J事案と呼ばれ、日本No.1の武田薬品工業の高血圧治療薬ブロプレスについて、既存の高血圧治療薬との比較試験で、血管系疾患の発生に統計学的有意差がないのに、一定期間経過後には差があるかのような誤解を招きかねない広告が発覚し、平成27年6月、薬機法の誇大広告禁止規定に違反するとして、業務改善命令が出された事案です。
生活の糧を、臨床研究全般のコーディネイトを業務としている小生にとって、「倫理指針に基づく実施・指導体制」から「法律に基づく実施・指導体制」への見直しは、納得出来るものではありません。
その理由は、検討会のメンバーの中にも小生と同じ気持ちを抱いている方々がおられるように、自由な研究環境であるのに、研究意欲の萎縮を招きかねないこと、研究者に
過度の負担を課すことになり、医療の発展に大きな損失を招くことになるでしょう。
小生は、この製薬会社2社に対し、行政はもう少し重い処罰を課すべきと思っています。例えば、数年、臨床研究が実施出来ない業務命令とか。
我が国の臨床研究に対する国内外の信頼性を取り戻すためには、直ぐに、法規制と言う
手段を取るのは、如何なものでしょう。
たかがこの2社のために、今日まで、「倫理指針に基づく実施・指導体制」下で、その体制を遵守し、医療の発展に微力ながら貢献してきている研究関係者がいることを、
行政は、もっと理解すべきではないでしょうか。
研究者の学問の自由、医療現場への負担を踏まえた実効性のある手段が、法規制の実行以外にも、あるのではないでしょうか。