新・駐日ハンガリー大使は有能なビジネスマン
ー日本との更なる協力関係を構築したい

ビジネスマンとして経験した日本市場の”特殊性”

―2016年月に大使に就任されました。それまでのキャリアについてお教えください。
大使 2002年に故郷の ペーチュ大学から、関西外国語大学の留学生として初めて来日しました。そのころアジアについて何も知らなかったので、アジア学を学びたいと思ったのです。日本についても正直、サムライやハイテク商品についてのイメージぐらいしかありませんでした。
その後一度日本を離れて、2004年に名古屋大学に留学、国際関係論を学びました。博士号を取得し名大の客員教授を務め、結局名古屋には10年住んでいました。
―名大在学時代からビジネスマンとしてご活躍されていたようですが…。
大使 当初はハンガリーの新聞と雑誌の日本特派員の仕事をやっていました。私の大学での博士論文のテーマは日本外交でしたので、それはジャーナリストとしての仕事にも役立ちました。そして2008年にハンガリーの大手食品メーカー、ビック・セゲド社の東京事務所を立ち上げたんです。
その仕事と同時並行で東欧から日本に進出する企業をサポートするエンピ株式会社も設立しました。日本で商談相手との信頼関係を築くまでには時間がかかります。我慢が必要です。ただ信頼関係ができた後は、ことがスムーズに運びます。始まりは早いけれど後で問題が発生する海外のビジネスとは、事情が異なります。そういった事情を、日本に進出したいハンガリーの企業に伝えるのも、大使としての私の仕事です。
以前はピック・セゲド社の代表としてFOODEXJAPAN(毎年、幕張メッセで行われる国際食品・飲料展)に参加していましたが、先の3月の同展示会には大使として訪問しました。ピックだけではなく、出展した10社のサポートをしないといけなかった。まだ日本の市場に輸出していない企業に、どう私の経験を伝えられるかを考えながら活動しました。

”コストパフォーマンス”が高いハンガリーの魅力

―大使から見て、今の日本の現状をどう捉えていますか。
大使 生活・教育のレベルが高くて、非常にいい国だと思います。
特に15年前に比べるとワークライフバランスが良くなってきました。少子高齢化の問題は解決しなければならないでしょうが、住みやすくていい国です。
現在の安倍政権は政治でも経済でもとてもいいコンセプトを持っていて、非常にうまく国を動かしていると思います。
―現在ハンガリーの高等教育機関で400人以上の日本人が学んでいると聞いております。
大使 間違いなく留学生は増えていますね。ハンガリーは教育のレベルが高い割に、比較的学費が安い。学費だけではなく、生活や食についてもコストパフォーマンスが高いんです。そしてこれは観光客へのアピールにもなりますが、非常に治安がいい。首都ブタペストは200万人以上の人口がある街なのに安全です。女性が一人で夜中に出歩いても、全然問題はないはずです。
―特にハンガリーの大学の、医学部への留学生が多いですね。
大使 300人以上の日本人の学生が、6年間のフルコースで学んでいます。ハンガリーで医者の資格を取ればEU全体で通用するし、日本に帰っても国家試験を受ければ一般の医者になれます。
レベルが高い、サービスが良い割にコストが安いというのは、教育や観光客に関してだけではなく、貿易に関してもいえることです。現在ハンガリーに日本企業151社が進出していて、そのうち約50社が工場を持っています。労働者の賃金は世界的に比較してまだまだ高くないですし、これも労働者や環境のクオリティーとのバランスを見た上で、コストパフォーマンスが高いといえます。
―企業の海外進出先として、他にどんなメリットがあるでしょうか。
大使 地理的にヨーロッパの真ん中にあることもメリットの一つです。ハンガリーはオープンエコノミーというコンセプトを持っていて、海外の企業の誘致活動を積極的に行っています。今年、法人税を9%まで下げましたので、投資先としてはかなり魅力的だと思います。それと8年ほど前からインフラの開発を重点的に行って、鉄道をはじめとする交通網が充実し、国内の移動時間は相当短くなりました。ブタペストからは、どこに行くにしてもほぼ3時間半以内で行けるようになりました。
 これまで日本からは自動車関連の企業の進出が多かったんですが、もう少し企業進出の分野を広げたいと考えています。例えば食品産業、製薬・農薬産業、IT産業に期待しています。

日本とV4の協力関係強化を

―ハンガリーはV4(ハンガリー、チェコ、スロバキア、ポーランドの地域協力機構)の提唱国です。日本とハンガリーとV4、今後どう関係を強化していきたいですか。
大使 V4を設立した(1991年)ことによって、EUの中で4カ国の声は影響力を増しています。私たちは順調に経済成長を続けていますし、4カ国合わせればかなりの人口になります。だから日本がV4と話す意味は絶対にあると思います。これまで日本とV4とのサミットは1回しか行われていないので、ハンガリーが議長国である間にぜひサミットを行ってほしいんです(ハンガリーは2017年7月~2018年6月までV4議長国)。1990年に初めて日本の首相として海部俊樹総理がハンガリーをご訪問されました。もし今ハンガリーに安倍総理や政府要人の方に訪問していただければ、お見せできるものはたくさんあるでしょう。ハンガリーだけでなく日本にとっても非常にメリットがあると思います。
―今後日本との関係にはどんなことを期待していますか。
大使 もっと貿易の協力関係を密にしていきたい。国際経済交流協会からも貿易のサポートを期待しています。それに関していろいろなイベントも考えています。ハンガリーから日本向けの輸出も、日本からハンガリー向けの輸出も、まだまだチャンスはいっぱい残っていると思います。共同でうまく考えながら、チャンスをつかんでいきたいですね。

(本誌取材班)