『難問山積の外交・内政の打開には未来志向の高い志とグランドデザインの刷新が必要だ』


衆議院議員 衆議院予算委員会委員長 河村建夫
聞き手/公益社団法人 国際経済交流協会 会長 米田建三   
(2015年7月発行World Navi)

米田 河村先生は当協会発足以来、顧問をお引き受けいただき、また政界での大先輩でもいらっしゃいます。今日は、小泉内閣で文部科学大臣、麻生内閣では官房長官と政府の重責を担われ、自民党においては文教政策の中心であり、選挙対策委員長として自民党の政権復帰を実現するという自民党史上画期的な役割を果たされた、経験豊富な重鎮政治家としてお話を伺いたいと思います。
 さて先生は、日韓親善協会中央会の会長で、日韓議連の幹事長をお務めです。日韓関係は難しい局面ですが、日韓関係の健全化のためには何が重要だとお考えですか。

先人の志を受け継ぎ
日韓関係の打開を

河村 親善協会は民団とも連携しながら、草の根の交流をやっていますが、ここにきて観光客も減っています。過去を直視することを避けてはいけませんが、これからの時代を考えたとき、未来志向が大切でしょう。50年前、朴正煕大統領が日韓条約を結んだときの志です。いま韓日議連の会長をやっている方も当時は反対デモに参加していたぐらい、国内的には激しい反対を受けながらも朴正煕大統領は条約を結ばれました。それが韓国の経済発展の実現に寄与しました。
 たまたまその朴大統領の娘さんが大統領だし、日本は佐藤内閣の直系というべき安倍さんが総理です。この2人が先人の志を思い起こして会話し前に進めてほしいものです。
米田 相手の被害感情は理解できますが、日韓併合当時は帝国主義の時代です。我が国はロシアの南下による侵略の脅威に晒されていました。その防波堤の韓国が親中、親露と揺れていた。
河村 ほっとけば他国の侵略を受けたと言えば話は終わりになってしまいますが、しかし我が国も日清日露を乗り越えてきたわけです。あの時代にどう国を運営するかという判断を王朝が誤ったと言わざるを得ません。
米田 朝鮮王朝があまりにだらしない。当時朝鮮側にも日本との連携を求める一進会という大きな組織がありましたが、この事実は韓国では全く無視されている。科学的に、また事実を踏まえて、日韓の歴史はこうだったという日がこなきゃいけません。
河村 50年、70年経っても生々しい過去があります。日本でも会津には150年経っても長薩許すまじ、の思いがあると聞きます。過去は消えることはありませんが、韓国は経済大国になりました。自ずとそうした国としての振る舞いが必要とも思います。
米田 政府間では難しいとしても、民間ベースではお互いに言いたいことをどんどん発言し、歴史の検証をしていくことが必要ではありませんか。
河村 韓国に経済ミッションが行ったとき、大統領が政治はともかく経済は交流を深めていきましょうと話をされたので期待がありました。しかし日韓条約と経済協定(資料)には未解決の問題があるとして民間企業に賠償請求がなされ、韓国司法がそれを認める事態となり、経済交流もおかしくなってきています。
米田 日韓条約が締結された昭和40年に経済協定で日本が韓国に約束したのは5億ドルでしたね(資料)。加えて民間借款が3億ドルですから計8億ドル。 これは当時の韓国国家予算の2・3倍もの金額です。
 日本は敗戦後の苦しいときだったのに巨額の支援を行ったんです。これがその後の韓国発展の原動力になった。韓国側は国も個人も、また徴用まで含めて全ての請求権を放棄する。そして、日本側も巨額の在韓日本資産の請求権を放棄した。公的資産だけでなく、個人資産もです。欧州諸国が植民地から撤退するときは、個人資産は取り返したと言われていますが、日本は敗戦ということもあって全て放棄です。こつこつ積み重ねてきた個人や企業の努力の成果である住宅、商店、工場や機械など全て置いてきました。我が国が新生韓国に渡したものは、援助資金だけでなくこういったものもあるわけです。こうしたこともどこかではっきり言うべきでしょう。
河村 反日法といわれる法律があります。親日家とされたら当時の財産を没収するというものです。また憲法にも三・一独立運動をはじめ日本からの独立ということを基本にしています。こうしたいわば反日一色というなかで、しかし金大中大統領はこれらを乗り越えて、政府の責任で慰安婦問題の決着をつけるとおっしゃった。
米田 慰安婦は政府や軍が公の政策としてやったことではない。軍に付いてまわった売春業者の事業です。国家の事業ではなかったのにそれを曖昧にしています。河野談話は是正されなければなりません。
河村 この問題は戦争につきものの負の遺産だから表であからさまにしてやるべきことではありませんでした。金大中大統領は自分の国でやると言いました。日本は慰安婦の存在そのものは事実だからとして未来志向でアジア平和基金をつくって、当時統治下にあった人に支給しました。ところが70%の韓国人は日本が基金をつくったことを知りません。7代にわたって総理がやってきたことも知りません。
米田 当時慰安婦で一番多かったのは日本人の貧しい女性。あたかも朝鮮人女性だけで慰安婦が構成されていたかのように宣伝されている。また強制ではなく業者の求人募集に応じて就労したもので、自由応募だ。もちろん悪質な仲介業者に騙されたり、親に売られたりした人はいるだろうが、断じて国家が連行したわけではありません。どこかで真実をはっきりさせないと若い世代に与える影響が甚大です。日本人であるだけでうつむいてしまうことになります。
河村 慰安婦がなかった、となると韓国だけでなくて人権蹂躙を隠蔽しようとしている、として先進国の間の問題になってしまいます。否定することでは打ち消せないのが難しいところです。
米田 慰安婦の存在がなかったのではなくて、国家による強制連行はなかったのです。河野談話の罪は実に大きい。日本人は劣悪劣等民族だという烙印を押してしまうことになります。次世代の日本の若者に根拠なき汚名をきせないためにも、政府の責任は重大です。

地方創生

米田 河村先生は自民党の地方創生実行統合本部の本部長でいらっしゃいますね。
河村 この前の統一地方選挙から地方創生を語っています。全国の半分近い自治体が機能を失っていくという予測が出ています。これを防ぐためには東京圏に集中した人口を出生率が高い地方に移すことが必要です。そのためには地方に仕事をつくり若い人たちが移れるようにしなければいけない。ネットが発達したから、東京にいなくても情報に欠けることはありません。大学の設置についても地方創生の観点から考えてくれと文部科学省にも言っています。
 東京一極集中の是正と地方の活性化はセットです。党も実行本部をつくって政策を統一して取り組んでいます。
米田 明治政府の政策はおおむね成功しましたが、いまは負の面が出ています。政府の政策として大都市集中を進めた。つまり欧米に早くキャッチアップするため、太平洋側の大都市に人口を移動させ工業拠点をつくってきた。これからは政府の責任として各地方ごとのグランドデザインを描き直して、それにふさわしい企業を本社ごと移転させる。そのために税制などでインセンティブを設ける。そのような大きな政策が必要ではありませんか。
河村 移転優遇措置は税法にも既に入っています。道州制はなかなか進みませんが、世界の中には日本の道州より小さな国はいっぱいあるので、道州規模で自立することは可能です。
 地方の制度も、政令指定都市などが中核都市となってまとめていくか、京都府北部地域連携都市圏がよい例ですが、いくつかの自治体をグループとしてまとめて、エリア全体で一つの都市とみるなど、いくつかの手法が考えられます。
 日本ほど一極集中の国はありません。大阪の機能も強化しないといけない。多くの大阪企業が東京に本社を移転しているなかで、300年続く、我が国で最も古い歴史をもつ製薬企業の一つである田辺三菱製薬株式会社が、道修町に本社ビルを新築してどっしり構えているのは立派です。
 まさしくグランドデザインの書き直しをしないと、首都圏直下型地震だけでなく、安全保障上もこのままでは大変危険です。国土軸は太平洋側だけでは足りません。村山内閣を受け継いだ橋本首相も日本海側に軸が必要だとお考えだった。あまり知られていませんが、日本海沿岸地帯振興促進議連というものもあり、がんばって活動を続けています。
米田 私の故郷は長野県ですが、県庁所在地の長野市は新幹線で東京と至近距離になったが、北に偏った位置にあり、県の中部南部の県内都市交通が不便です。この間、上田に行ったら、松本まで33㎞という標識を見たので、すぐ行けると思い地元の人に聞いたら「高速直通バスなんぞはない」という。飛騨高山─松本ルートはもうできているのだから、上田─松本間の道路交通の整備をしっかり行えば、新たな幹線ができることになるはずです。
河村 私の所も、例えば山口と鳥取の連絡が非常に悪い。東京や大都市を中心とした放射状の交通ばかりが整備された結果です。横のつながり、都市間連携を見直していくことは地方創生にとって大切です。

教育の立て直し

米田 ところで先生が特に力を入れてこられた教育の問題ですが、このところ非常にいやな、異常な事件が子どもたちの世界でも起こっていますね。
河村 いじめはかなり対策をしてはきましたが異常な事件が後を絶ちません。改めて家庭の大切さを思います。加えて地域、コミュニティーで子どもの育成をやっていくという考え方が必要で、PTAだけでなくその外にいる人たちも含めたコミュニティースクール制度もできました。
 これからの教育は地域の皆がチームになってやっていくしかありません。例えばインターネットやスマートフォンなどの利用における情報倫理。どうやって教えたらいいか、もう学校だけでは難しい。また普段の生活でいうと、よその子も自分の子と同じように叱る。子どもは宝というがよその子にも自分の子と同じように接する。こうしたコミュニティーが存在するかどうかは、出生率にも関係します。
 出生率については、2040年に1億人を切る人口を1億にとどめたい。そのために1・89の出生率にもっていきたい。できれば欧州並みの2以上にもっていきたいと考えています。
 鹿児島県の徳之島の伊仙町は5000人弱の人口ですが、出生率は2・83。5人の子どもをもつお母さんから、子どもは宝だと皆が思っているので子どもを産むことに心配がないという話を聞きました。谷垣幹事長の福知山も1・8ですが、コミュニティーがしっかりしていると産みやすいことがよく分かります。
米田 地域共同体が残っているわけですね。これからの日本を考えるとき、特に戦後に否定され破壊されてきたものを再評価することが日本再生の鍵のひとつでもあると思います。
 内外に難問が山積している時代だからこそ、ベテラン政治家の力量がますます必要とされています。先生の今後の一層のご活躍をお祈り致します。本日はありがとうございました。