自立と勤勉の論理を取り戻し、公正な国をつくろう』


衆議院議員 自由民主党政務調査会長 高市早苗
聞き手/公益社団法人 国際経済交流協会 代表理事 米田建三   
(2014年1月発行World Navi)

米田 振り返ってみると随分長いお付き合いになりますね。
高市 そうですね。私が一年生議員の時からです。初めてお会いしたのが平成5年。
米田 安倍総理とはいろいろ連絡を取らせて頂いており、この間(11月11日)も官邸に伺っていろんな意見を、僭越ながら直接申し上げもしたんですが、現政権は非常にうまく行っているように見えます。どうですか、与党の中心におられて。
【公約を着実に実行する安倍政権】
高市 そう思います。安倍内閣の第一の矢、第二の矢、第三の矢の内容は、平成24年、私たちがまだ野党の時に、衆議院議員選挙の「自民党政権公約2012」に書いたことです。それを見事に実行して頂いています。
 金融緩和については、「物価目標2%を設定。政府・日銀の連携強化の仕組みを作り、大胆な金融緩和を行う」と書きましたが、実現しました。12月26日に安倍内閣が発足し、1月22日に政府日銀共同声明が出て、物価目標を明示しました。
 機動的な財政政策については、「政権発足後、速やかに緊急経済対策を断行」「本格的大型補正予算」と書きましたが、実際に政権発足後17日目に緊急経済対策を策定し、21日目には10兆円規模の補正予算を決定しました。
 成長戦略については、「産業競争力会議の設置」「日本経済再生本部を新たな司令塔にする」「日本を世界で一番企業が活動しやすい国にする」「クールジャパン戦略の国際展開」「インフラシステム輸出」を書きました。規制緩和もかなり書き込んでいます。
 一つずつ着実に内閣が自民党の公約を実現している限りは、政高党低と言われても結構ですので、しっかりと内閣を支えます。公約を破るようでは党の声が大きくなっていくことになるでしょうが、今は良いバランスでやってると思います。
米田 新聞を読んでいても毎日いろんな角度からヒットを打っている感じがして、頼もしく思うのです。特に経済政策はたいてい上手くいかないのが歴史的事実であって、戦前からの歴代内閣をずっと見渡しても経済的に重大な局面に立たされていろんな政策が打たれたけど、大体失敗しています。
 いろいろ批判する野次馬もいるけれど、今おっしゃったように短期間で数字で結果を示していることは立派なことだと思っています。株価がいい例ですが、政治が何かやって見せたというのは久々だから、スッキリした思いの人が多いんじゃないかな。凄いインパクトを与えていると思います。
高市 そうですね。わずか1年で株価は7割以上アップし、為替も2割改善しました。
米田 それだけにあなたも私も初当選のときから一番心配していた事、つまり戦後引きずってきたいろんな頸木からどうやって脱するか、という国のあり方についての根本課題の克服も安倍内閣に期待されていますが、この面でも随分前進がありますね。NSCも設立したし。特定秘密保護法案も含めて歴代内閣ができなかった事を着々とやっています。
 しかし例えば総理とアメリカのバイデン副大統領の昨日(12月3日)の会談。あの会談で日本は防空識別圏の明確な撤回を求めると言明し、日米共同宣言にまでもっていってくれるんじゃないか、という期待を、いわゆる一般国民はともかくとして、外交や安保に関心のある人たちは抱いていたと思います。しかし、そこまではいかなかった。
 私はそうした意識的な国民の声に直接に接することが多いので、国民の心配を代弁する意味でお尋ねしたいんですが、アメリカとの連携はかなり安心していいんでしょうか。
【中国の防空識別圏問題でより強化された日米同盟】
高市 オバマ政権が発足して暫くは、アメリカは中国に寄っているようで心配だったんですが、11月の中国による防空識別圏設定の直後に、日米同盟の強さを認識しました。
 それはあの直後に、ケリー国務長官が声明を発出して、「領空に入ろうとしていない外国の航空機に、防空識別圏に係る手続きを適用する試みは支持しない」と深い憂慮を示し、ヘーゲル国防長官が、「日米安保条約第五条は尖閣諸島に適用されるという長年の政策を再確認する」という声明を発出しています。
 つまり中国に対して非常にきついメッセージが、迅速に国際社会に伝わりました。
 日本も同じように抗議し、即時撤回を求めましたので、足並みを揃えてやれたと思います。安倍総理が同盟国であるアメリカとの関係を重視しながら対応してこられた成果が出てきていると思いました。
米田 日本国内にはオバマ政権に対して、ソ連と徹底的に対峙してついにソ連崩壊に導いた、レーガン政権の時と同様の信頼を寄せていいのかという心配の声がありますが。
高市 共和党政権時は、特に安全保障については強い行動がありましたね。だけど今回も(平成25年)11月23日に中国が防空識別圏を設定したあと、27日には米軍機が防空識別圏を通告なしに飛行しましたね。28日には日本の自衛隊機も防空識別圏の奥深くまで飛んで、相手の反応がそれまでと変わらなかったという確認をしているので、やるべきことはやっていると言えるのではないでしょうか。
 アメリカの民間航空会社が飛行計画を出したのも、アメリカ政府が提出を勧めたわけではない、というのが現時点での外交ルートでの情報です。
【国民の安全保障意識は明らかに変わって来ている】
米田 国民が中国のおかげで相当学習しました。安全保障政策の重要性がみんな分かるようになってきています。だからあまり遠慮せず、堂々と自由民主党の本来言いたかった事を言う絶好のチャンスだろうと思います。
 隔世の感があるなと思ったのは、自衛隊法の改正で、私も現役の頃散々言って来たことですが、在留邦人保護のための出動も、携行武器も簡単な重火器の携行をも認めた。あれは内閣提出法案でしたね。
高市 じつは最初は議員立法で、私も提出者でした。最初に自衛隊法改正案の原案を私が書いたのは、10年も前です。海外で邦人が拘束された時にそれを奪還できる内容まで書いたんですが時期尚早ということで、党内審査にも至りませんでした。
 小泉内閣の時に、海外に出ていった若者が拘束されて亡くなった事件ありましたね。あの事件で、邦人保護はきちっと法制化するべきだという思いが益々強くなりました。政権を民主党に取られた翌年の春には、韓国の哨戒艦が撃沈されています。その後の延坪島攻撃もあり、朝鮮半島情勢がかなり緊迫していました。その時にも「自衛隊法改正案」を書きました。
 韓国に駐在や留学している3万人以上の日本人が朝鮮半島有事の時にどうなるのか。自力でみんな空港まで逃げて来てくださいとしか言えない法制度でしたから、自衛隊が陸路でも避難警護ができる改正案を書いて、議員立法で出したんです。当時は小野寺さんや私が提出者で。でも野党提出法案でしたから、審議もされないまま、平成24年の解散で廃案になりました。
米田 最終的に武器使用権限はどこまでになっていますか。
高市 武器使用もできるし、装甲車も持ち込めます。空からも援護できます。
米田 昔だったら国論を二分する大騒ぎになったでしょう。ようやくまともになってきたわけですが、特定秘密保護法案は大分反対の声もあるし、デモも国会周辺で毎日やってるようですね。
 しかし世界中でこういう法律がないのは日本だけなんで、堂々たる正論で是非ちゃんと押し切って頂きたい。そうしないと国際社会で、情報が漏れ放題の日本のままではまともな付き合いをしてもらえなくなります。
 当たり前の常識を党も政府ももっと宣伝した方がいい。結構分かってない人がいるんですよ。
高市 一般国民もある日突然逮捕されるような事を平気で書いているマスコミがあります。虚偽の報道には怒りを覚えますね。
【集団的自衛権は説明の仕方を工夫すれば十分理解される】
米田 集団的自衛権の容認も誤解が大きいですね。実はアメリカの艦船が攻撃された時に対応できなかったり、米本土へ飛ぶミサイルを落とせないと同盟への背信になると言われてすぐ理解できるのは、ある程度分かった人なんです。
 一般国民は、この言い方では逆な方向に煽られてしまいます。「ほらみろ、これはアメリカに奉仕するための法律だ」となる。
 「そうじゃないんだ、日本の安全のために必要なんだ、日本のプラスなんだ」という広報をしっかりやらなければ。例えば現状では、自衛隊は日本の安全のために公海上で戦っている米軍と共同作戦が取れない。日本は自分の領海を出るなりいつも後方部隊しかやれない。自国を守るための行動なのにこれじゃおかしい。抑止力の十分な行使にならないだろう、と言えば多くの人は理解します。
 ともかく戦後半世紀の歪みきった状態を直して、何とか今の政権でまともな普通の国にして頂かないと大変なことになる。
高市 ごくごく普通の国にね。どの国もシビアに冷静に国益を見ていますから自国にメリットの無いところには関与しません。今はまだ、アメリカと組んでいると巻き込まれるんじゃないか、という巻き込まれ論と、巻き込まれるのは恐いが日米同盟が緩くなってしまうといざという時にアメリカは助けに来てくれないかもしれない、という取り残され論が半々ですね。
 しかしアメリカから見たら、自国の若者がボディバッグに入って帰ってくるかもしれない危険をおかして命を懸けて日本を守っているということでもあるのです。
 この有難味はなかなか理解されません。日本に沢山ある米軍基地周辺では、騒音は聞こえるし墜落事故も起きた。負担は見えやすいんですが、米軍の存在による抑止力はなかなか見えにくい。その辺りが感情的な反発を受ける原因の一つでしょうね。
 でも、民主党政権の時に海保の船が中国船の行為によって酷い目に遭ったのに、その情報を隠した。しかし、一色さんの行動によって真相が明らかになった。この一連の事件に対する国民の反応を見ていると、意識が変わってきているのが明らかです。また、資源安全保障についても大きな関心が寄せられています。
 特に私が心配しているのは、サイバー攻撃です。人員も予算も相当必要です。安全保障戦略の策定にあたっては、サイバー攻撃対応や、在外邦人の保護、宇宙ゴミの問題などが入ってくると思います。
【海外進出企業への政官の支援の充実を】
米田 昨年当社団で経済視察団を作って、中・東欧を回ってきました。(本誌16~17頁に報告を書きましたが)日本の企業も沢山進出して必死に頑張っています。しかし政官のバックアップが足らないと痛感しました。
高市 私も同じ事を考えています。来年度の予算では改善されそうですよ。国際的な発信力の弱さによって、例えば領土問題が典型なんですが、国際社会に正しい事を伝え切れていない。海外でホテルに泊ると、中国は英語ニュースを流しているのに日本はNHKの日本語番組が流れるだけ。日本発の英語番組をもっと発信するべきです。
米田 国全体として、企画宣伝する力強い機能がぜひとも必要ですね。
高市 おっしゃる通りです。中小企業が海外に出る時に大使館に問い合わせたら、縦割りで、現地の経済法制と労務法制の担当者が別々で、情報が得にくかったんです。或いは農家が海外で販路を開拓したい時に、今まではジェトロも農水省に遠慮して動きにくい状態でしたが、商談会で商談をまとめるまでの支援をやってくれるようになっています。
(※編集部注 本誌14~15頁参照)
米田 私たちの社団では、こうした問題を民間の公益団体の立場で外務省やジェトロと一緒になって解決していくお手伝いをしようとしています。(18頁下段参照)
【女性の社会進出支援について】
米田 さて話を変えて、女性の社会的な進出支援について、安倍政権はバックアップ策を強力に打ち出し始めました。私は大変結構な事だと思うけれども、逆特権を与えるような事はおかしいだろうという声が一方であるでしょう。
高市 本当に女性が力をつけて世の中で活躍しようと思ったら、下駄をはかせて結果を平等にするんじゃなくて、能力や努力に応じてチャンスを平等にする環境を作ることが大事だと思います。
米田 是非党の政策責任者としてもどんどん政府を督促し、理に適った政策を推進してください。
高市 そうですね。待機児童の解消も責任を持って政府与党でやりますから。
【今後の抱負】
米田 最後に、政治家高市早苗としての今後の考え方、目標を伺います。
高市 自立と勤勉の倫理を取り戻すこと。公正な国を作ること。これに尽きます。民主党政権の時には、ウチはいくら貰えるのかっていう話ばかりが国中に蔓延した。私はもううんざりしていた。これじゃ日本は駄目だって本当に思った。敗戦後でも、先輩世代の方々が歯を食いしばって必死に働いてくださったから今の日本があるんですから。
米田 政権が安定しているうちに多少の軋轢を恐れずになすべき事を是非なして頂きたいと思います。頑張ってください。
高市 ありがとうございます。