外交安保は与党と協調、内政で厳しく対峙する強力な野党が必要』


衆議院議員 松野 頼久
聞き手/公益社団法人 国際経済交流協会 代表理事 米田建三   
(2014年4月発行World Navi)

米田 あなたとは、鳩山政権で官房副長官を務められた頃からのお付き合いでしたか。
松野 そうですね。ただ、私は2000年初当選ですが、その1回生の頃から先生のことはよく存じ上げておりました。自民党、小泉政権で内閣府副大臣をやられておられた頃ですね。
米田 そうでしたか。私の方も、松野頼三先生のご子息ということで、当初から注目しておりました。お祖父様の松野鶴平先生は、参議院議長を務められた方でもありますし。つまり、松野家はずっと政治に関わってきたわけですよね。
松野 そうですね。鶴平は戦前から議席を持ち、戦後、参院議長になったのですが、戦前は立憲政友会に属し、それから自由党に転じたわけです。55年の保守合同では裏方を務め、その関係でいまも自宅には『自民党結党綱領』があります。
米田 なるほど、保守政治の歴史を感じさせるお話ですね。ところで、そういう流れを汲むあなたが、いまや野党再編のキーマンとして注目されています。私は、あなたの優れたバランス感覚や人をまとめる包容力を高く評価していますが、あなたにとってのあるべき野党像とはどんなものでしょうか。
松野 あるべき姿ですね?
米田 ええ。現状を顧みますと、私個人はもっと安倍さんに頑張ってもらいたい。しかし、国政のあるべき姿として、しっかりした野党も必要だ。またその野党が、国益を重視しないような野党だと困る。私はやはり、外交・安保政策は自民党と軌を一にするが、内政では厳しく対立する野党の存在が国家のために必要ではないか―そう思っておりますが、いかがですか。
松野 維新の立ち上げ時はもちろん、新党研究をしていた頃からご指導いただいた先生にお話しするのはおこがましいですが、新しい時代の野党の姿というものについては、こう考えています。先生もおっしゃる通り、外交・安保では対立軸を示すのは難しい。これは、鳩山政権での官邸経験から思うのですが、あの時は失敗しました。日米から中国、アジアへと基軸を移してしまったかに見え、大いに誤解を受けてしまったのです。
米田 鳩山政権が唱えた東アジア共同体構想のことですね。
松野 そうです。あれで対米姿勢がぶれてしまったかに思われてしまったのです。私たちは、日米を基軸とする路線は不変と考えています。そのうえで、アジアの平和に寄与するのが日本である、と。それを踏まえたうえで、外交安保政策の細部については是々非々、内政は自民党が倒れたときに違う道筋を示せるような明確な対立軸を作っておく必要があるという考えです。
米田 なるほど。要するに、政権が代わっても外交・安保政策が大きくぶれてはダメということですね。集団的自衛権についてはどうお考えですか。
 安保政策は、衆議院議員時代、大学教授時代を通じての私の専門分野ですが、これは極めて単純明快な話なんです。つまり、一国だけでは自国を防衛できない国際社会の現実に鑑みて、同盟国をはじめとする友好国と連携して自衛の権利を貫徹するということであり、主権国家に当然の権利として国際法上、容認されてもいる。しかるに、反対派は、地球の裏側の戦争まで付き合うのか、などと荒唐無稽な子供ダマシの話で国民の不安をあおり、反対の声を盛り上げようとしている。およそ歴史上、無制限に同盟国の戦いに付き合った例なんぞはない。あくまでも、国益と自国の防衛に資する範囲において共同行動をとるものでがおかしかったのだと思っています。今まで内閣法制局が憲法解釈権を持っているかのような状況が続いてきましたが、それに対し、先日の予算委員会で、「たかだか一役所のトップにすぎない内閣法制局長官に憲法解釈権があるのか」と聞きました。「最高裁の判例を積み重ねるのが憲法解釈だ」という答弁でしたが、当たり前の話です。内閣法制局長官に憲法解釈権なんかない。そもそも、集団的自衛権は独立国であれば当然与えられている自然権です。憲法が禁じているのは、あくまでも国際紛争を解決する手段としての戦争であって、個別的自衛権も集団的自衛権も与えられているわけです。それを行使するか否かは、その時の内閣が決めればいい。行政権の範疇だと思っています。
米田 行使できるが、それは政策判断によるということ?
松野 そうです。外交権と同様、安全保障権も内閣に属する。ただし、自衛の目的以外の戦争はいけないと。
米田 なるほど。まあ、昨今のウクライナへのロシア軍の介入や中国の覇権主義的行動を見ても思うが、そういったきちんと自国を防衛する姿勢を明示することが、それらの国への牽制、抑止力にもなるでしょうね。
松野 当然、そうなるはずです。
米田 集団的自衛権は憲法で認められているとおっしいましたが、そもそもの憲法自体はどうか。憲法とて不可侵ということは、ありえないのではないでしょうか。他国では実際、何度も変えられてきています。
松野 不可侵なんてありえませんね。憲法制定から半世紀以上が過ぎ、チェックすべきことは多いと思います。
既得権益の打破、農政改革
米田 内政については、どんなことをお考えですか。『既得権益を打破する会』を主催していると聞きますが。
松野 あれは、細野氏が民主党、江田氏がみんなの党の幹事長であった時に、維新の私も入って3幹事長で作ったものです。行政改革や規制緩和、統治機構改革などの必要性で一致したことによりますが、なかでも規制緩和は急務でした。これが進まないことには、雇用も消費も投資もなかなか拡大しないからです。外国人投資家はとくにそうです。まあ、憲法改正も含め、行政改革、規制緩和、統治機構改革はセットで行うべきでしょうね。いずれも現状は、いまの時代にマッチしていません。日本衰退の原因はここにあると思っています。いまの社会状況を見据えた形で新しく作り直さなければ発展はないという思いからこの会を作ったんです。
米田 大いに結構。規制は官僚機構の権力の源泉であり、それに連なる業界団体が権勢をふるうのもそのせい。ここに手を突っ込んで変えていかなくてはなりませんが、打破すべき既得権益とはどんなものを考えているんですか。
松野 たとえば農協。もちろん存在意義がまったくないとは言わないが、それにしても問題が多すぎはしないか。ある生産者がこんな話をしていました。「出荷用の段ボール箱を農協から買っていたが、ネットで調べ業者から見積もりを取ったら年間86万円も節約できることが分かった。で、切り替えようとしたら、農協から『なら、融資を引き揚げるぞ』と言われ、断念せざるを得ませんでした」と嘆くのです。物流についてもそうです。民間の配送業者の方が安いのに、農協がダメだと言う。直販についてもそうだと聞いています。
米田 農協による規制、農民支配。つまり特権ですね。
松野 そうです。しかも、これが法で認められている。独占禁止法の適用除外を受け、優越的地位を行使してもかまわないとされている。しかし86万円が安くなれば、消費者のメリットもあり、消費が増える。消費が増えれば、経済活性化につながるし、農家が儲かるようになれば後継者不足も解消する。場合によっては売り上げ増が自給率増にもつながる。そういったチャンスを潰しているわけです。
米田 物品や肥料販売、預金等々、農協は網羅的に農家を支配しているという話は、私もよく聞きます。知人の会社経営者が郷里に帰った際、同級生の農家の人たちが皆同じトラクターを一台ずつ持っているのを見て、「共有にしたらコストダウンができただろう」と言ったら、農家の人たちは「農協の強いすすめで、それぞれが農協の融資を受けて買った」と答えたそうです。いまの農協には、農政改革を阻害する部分がある。自民党はこうした農協を抑えられない。健全野党としては、農政改革を対立軸のひとつにしてみてはどうか。
松野 自民党に農協改革はできないでしょうから、いいかもしれませんね。農協のシステムがすべてダメとは言いませんが、農協は一括で大量に購入するわけですから、もっとコストを抑え、組合員である農家に市場で買うより安い価格で物品を提供すれば、農家は儲かるはずです。
米田 わたしは北海道開発庁総括政務次官当時、農畜産業について少々勉強した。ある時、そこそこの規模の農家を訪ねたら、老夫婦だけでがんばっている。子供たちを都会の大学へ出したら、卒業しても帰ってこない。それぞれ、好きな職業についた。後継者について悩んでいた。
 考えてみれば当たり前の話だ。江戸時代じゃあるまいし、農民の子は農民というわけにはいかない。他方、都会の若者で農業をやりたいという人が実は意外に多い。ところが、非農業者が農業研修を受けて農業に参入し、農地も所有できるというスキームが未整備だ。依然として、農業は地縁血縁で結ばれたコミュニティーで行われることが前提にされている。個人であれ企業であれ、農業参入に意欲ある者をどんどん迎え入れる制度的枠組み作りが急務ではないでしょうか。
松野 家族経営が前提になっている政策の転換と同時に、農協には変わってもらう。農家をサポートするという本来の姿に戻ってもらうと言っていいかもしれません。健全な農家、農業の維持は食糧安保の観点からしても大事なので、ぜひともと思っています。
電力自由化に疑問
米田 ほかにはどんな規制の打破を考えていますか。電力自由化についてはどうですか。
松野 党としては発送電分離と言っていますが、僕の持論としてはどうかなと思う。歴史的にみると、安定供給と効率化のために、戦前には800社以上あった電力会社が集約されたという経緯があります。多すぎて、コストが高く、効率も悪かった。ですから、私個人としては、自由化には疑問がある。議員になりたての頃、英国に視察に行った時にもそう思いました。自由化により企業向けの料金は下がったようですが、個人料金の方はアップしていた。電力事業の要は、あくまでも安い電力を安定して供給することだと考えています。
米田 「いまがチャンスだ、発電事業に参入しよう」「自由競争こそ望ましい」という声もありますが?
松野 そこまで緩和する必要があるんでしょうか。国際的にみると、銀行にしろ、メーカーにしろ、あるいは法律事務所にしても、大規模合併がなされている時代。世界を相手に対抗していくには、大きくするというのが常道ではないか。だからこそ、この件については、本当に自由参入でいいのかと思ってしまうのです。
米田 大事なのは低コストと安定供給であるということですね。その意味からすると、原発についてはどうお考えですか。
松野 将来的には、ないに越したことはないとは思いますが、果たして今すぐに風力やソーラーで代替できるのかということです。1kWh当たり、ソーラーの買取価格は42円、原発の発電コストは6~8円です。結果、いま原発を止めてしまったら、ずいぶんと高額な電気料金となってしまう。それでもいいですか、と聞いたら、脱原発アンケートの結果もずいぶん違うと思います。いまの経済状況を見ると徐々に原発の比率を下げていくのが現実的ではないでしょうか。
米田 事故が起こったら即ゼロというのは確かに暴論。安い電力の安定供給という課題もあるが、現在稼働中の原発の安全を図る技術を維持・発展させる務めもある。実際、福島の事故はあったが、世界は日本の原子力技術に大いなる期待を寄せています。
 というのも、日本の原発政策がどうであれ、世界の流れは原発増故が起きれば気流の流れで日本も汚染される。日本の技術的発展は必要で、それは実際に稼働している原発があることで維持されます。
松野 そう思いますね。もちろん、ほかのエネルギー源を増やす努力も必要でしょうが。
米田 ほかのエネルギーについては、将来的にいろんな角度からの研究・検討が必要でしょうね。それも改革の柱のひとつですか。
松野 はい、そうですね。
中小企業政策の強化を
米田 ところで、アベノミクスについてはどうお考えですか。
松野 まず、「史上空前の金融緩和」と言いますが、中小企業の融資環境は若干しかよくなっていません。いったい20兆円も出したお金がどこへ行ったかと言えば、大半は金融機関が国債を買ってしまった。リスクを取って中小企業に貸すより、利回りは薄くても確実に利益を取った方がいいからです。二番目の「機動的な財政政策」でも、補正と本予算合わせて2・6兆円が基金に積まれ、さらに使い切れずに繰り越される公共事業費が3・8兆円にのぼる。つまり予算は付けたものの市場に流れていない資金が6兆円以上もあるわけです。
米田 たしかに、中小企業の嘆きはかなりのものだが、資金の滞留を止め、世の中に流通させるためにはどうするべきか。
松野 金融緩和で市場に出たお金が中小企業融資に回るように、金融機関の国債購入に縛りを掛けるなどしないとダメだと思います。それから、経済活性化のためには、不動産も活用するべきですね。そのためには、固定資産税、保有税、都市計画税、取得税、登録免許税等々の税金を下げて、更地を買って賃貸物件を建てて運用までしやすくなるように税制を見直すべきです。そうすれば不動産に海外の投資を呼び込めます。資産インフレが始まれば一気に景気はよくなると思います。また、資産インフレとなれば、中小企業の担保価値もアップするわけで、融資などもさらに円滑に実施されるようになるはずです。
 実体経済が伴うような国レベルでの政策・施策を行うべきだと思っています。
米田 中小企業と言えば、うちの社団の活動として、中小企業の海外進出のサポートを行っています。その際、企業の海外での活動をサポートする日本の国としてのパフォーマンスが足らないことを痛感しています。官のせいなのか、政のせいなのか、海外でのプレゼンスが低い。たとえば、タイ。あれほど日本企業が進出しているにもかかわらず、バンコクの空港の各種表示言語に日本語がない。英語と中国語だ。先日、訪れたチェコのプラハ空港でも、英語、ロシア語、そして韓国語でした。各国政府に申し入れするくらいのことができないのか。日本はおとなしすぎる、それが海外での率直な印象です。
松野 もっと国の後押しが必要ですね。金融や法律面での民間のバックアップ策の強化もしなくてはいけない。
米田 登場したときは華々しく脚光を浴びた日本維新の会だが、最近では支持率も低迷し、橋下代表のカリスマ的人気も色褪せた感がある。日本維新の会はこれからどこへ向かうのか。
松野 私はいまも、橋下徹は優れたリーダーだと思っています。言うなれば、立派な創造的破壊者です。たとえば大阪都問題。いまの大阪と東京を比べると、大阪は財政的に厳しく、将来性に欠ける。その大きな原因の一つが、府―市―区という3重行政にあるのです。東京は2重ですから、彼は市をなくすことでコストダウンを図り再生しようとしているのです。維新としては、それと同じことを全国的に実施したいと思っています。
米田 橋下さんは、堂々と国政に出るべきじゃないですか。
松野 出るべきだと思います。
米田 日本維新の会の今後、そして政界再編、いろいろ大変でしょうが、ご活躍を祈ります。