普通の国になるための外交の刷新をめざして』


衆議院議員 前外務大臣政務官 城内 実
聞き手/公益社団法人 国際経済交流協会 代表理事 米田建三   
(2013年10月発行World Navi)

米田 振り返ってみると貴方との付き合いも随分長いですね。
城内 私が外務省の北東アジア課にいた時からです。陰ながらのファンでしかも当時両親が先生の選挙区でしたから軽い気持ちでご挨拶に伺ったら、先生が確固とした国家観をお持ちであることに敬服して良く顔を出すようになり、ご指導を頂くようになりました。
米田 拉致問題にはじまり日本の国の真の再建という事を随分議論しましたね。それを通じて城内という人物の気迫と見識に触れ、これは公務員の枠を越えた人物であると感銘を受けました。

【政治家となるきっかけは米田代表との出会いから】

城内 私にとっては米田先生と触れたことで国会議員という仕事を本当にやってみたいと思うようになりました。政治家になるきっかけをつくってくださったのは米田先生で、安倍晋三先生と中川昭一先生にもお引き合わせくださいました。
米田 総裁選の前に安倍さんと会いましたが、勝敗を度外視した決意、政治家としての人生、生き方みたいな次元まで踏まえての決意を感じました。彼は自民党よりも国家を大事にしている。結局国家をどうするのかを最優先にして腹を括って出たんだね。
 政治家城内実についても私はその歴史的な場面に立ち会った。貴方が外務省に辞表を出した日に最初に会ったのが私たち夫婦だ。赤坂の小料理屋で食事をしているときに、あなたを誘って激励しようと思って電話したら今日辞表を出したっていうから驚いた。
 そして浜松へ旅立って自民党静岡県連の候補者選考コンテストでで勝ったんだね。
城内 その時はもう何か取り憑かれたようになって、やるんだ! っていうのを全面に出しました。「外務省辞めて退路を断ち家族ぐるみでやります、ここに骨を埋めるつもりで来ました」と。私は確かに政策も大事だけどやる気っていうか、根性、迫力みたいなものがスケールのでかい国会議員になるには必要だと確信しています。
米田 最終的に、同じ選挙区で対抗馬だった連立与党党首に自民党本部が遠慮して、公認もでなかったが地元の人たちは燃えてくれたんだね。最初は何から何まで大変だったでしょう。徒手空拳で入ったから。
城内 子供連れて四人で車で二日間かけて行き、ゼロから始めました。今は絶大な応援をしていただいているスズキ株式会社の会長からも初めは別の後援会の幹部だから応援できないって言われました。
米田 新人の初陣というものはキビシイね。
城内 とにかく藁をも掴む思いで、右も左も分からないんで是非ご指導くださいと。でも色々怒られたり出入り禁止に何度もなりました。落選中にも色々本当に怒られました。「いや会長それだけは違います」とか言うものですから、周りの方からは、なんて事言うんだ会長に向かって、とまた怒られました。
米田 政治家はそれくらいが大事だよ。それにあの方も苦労人でしょ。だからあなたのそういうところを買ってるみたいだよ。本誌7号で対談した時に「城内君はどうですか」って聞いたら「いやあ良い男だけど人の言う事聞かないね!」って。でも嬉しそうに話されていた。
 安倍総理とも色んな事があったと思うが私が見る限り彼も貴方に強い愛情を持っていたし、一連のいろいろな事も断腸の思いだったと思う。

【外務政務官として】

米田 さて二期目の安倍政権で貴方は外務大臣の政務官として政権の一員だ。その辺を踏まえてお話を伺いたいが、まずはやはりアルジェリア事件です。
城内 外務政務官は毎月一週間位は外国出張で、加えて外務省は人使いが荒くて(笑)機内泊や深夜に着いたりで所謂観光みたいな事は一切なく全部視察や在留邦人との意見交換、御用聞き、先方政府関係者との会談などの連続です。
 あのときはちょうどクロアチアの副首相兼外務大臣と会談のさなかにメモが入ってきて、大至急アルジェに飛べと。最短で翌日の昼過ぎに着きました。
 さてテロリストと交渉するとなると人質返す代わりに別の人質を出せとなるかもしれない、その時行くのは政府代表の私しか居ません。ですから最初はもう日本には帰れないだろから遺書書かなきゃなと思いました。事実上よど号事件の山村新治郎運輸政務次官と同じ役割だったと思います。指示はありませんが覚悟して行きました。実際はアルジェリアは80~90年代を通じてテロと戦ってきたのでテロリストとは交渉せず即時掃討という明快な原則を立てて行動している国ですからそうした事態には至りませんでしたが。
 首都に着いたら大使が迎えてくれて先方の政府幹部も来て状況説明を聞きましたが、その時既にアルジェリア軍による軍事作戦が始まっていましたので、すぐ外務大臣にお会いして、日本人を含む拘束されている人質全員の安全確保への最大限の配慮と、邦人の安否を中心とする最大限の情報提供をお願いしました。

【民主党政権の過ちを繰り返さない決意で】

城内 現地では実に色んな情報が飛び交っていました。その真偽のほどは現場にいないと分かりません。ところが砂漠の中の天然ガスプラントですから情報収集も困難を極めました。
 しかし日本の大使館が相当有益な情報を得ていたのには私自身も改めて感心しました。
 民主党政権全般が意思決定過程も誰が決めたのか誰が責任取るのかも不明瞭だしスピード感がなかった。それを繰り返してはならないと決意していました。 
 日本大使館から情報が漏れてアルジェリアの方ではこうだが外務省はこうで官邸はこうだってなったら原発事故の民主党政権と同じになってしまう。ですから責任はしっかり取るので窓口は官房長官に一本化しました。そして私が責任とりますと断言して、みなさんが最大限の能力を発揮できる雰囲気づくりを大使と一緒にやりました。
 テロリストはマグレブのアルカイダ系の人たちでイスラム原理主義者ですから、イスラム教徒だとすぐ解放するんですが、外国人は異教徒だから平気で殺したりする。テロリストは平気で人質を盾にしたし首に爆弾を巻いたようでしたが、アルジェリア軍はテロリストの弾が当たらないように盾になって移動中守ってくれたという証言もありました。

【日本外交の刷新をめざして】

米田 こうした事件で国際社会の危険性を日本人が自覚するのに反比例して、日本の外交パワーはものすごく落ちてはいませんか?
城内 私も率先して外交力の強化に努力していますが、決してただ予算を増やすのでなく対外的な発信の強化が必要です。広報すれば分かってくれる部分が相当あるのに、今までは黙ってることが多かったですから。
 各国がどういう形で宣伝活動をやっているかを分析した上で、我が方もそれを上回る形できちっと対応する必要があります。外務省も職員研修のあり方から直していって、在外の大使、他省庁からの出向者も含めて、しっかりマニュアルを作って、システマティックに、例えば毎週赴任国の2、3か所どこかで講演する。都市のみならず田舎も行く。たとえ聞き手が数人でも行って日本はこういう国です、とアピールする。他国を批判するだけじゃなくて、日本の在り様、文化を積極的に語るんです。
 昨今はクールジャパンという言葉もあるように日本文化への関心が高まっています。一般の普通の人たちのレベルでは日本って面白い良い国なんですが、誤解されてるところも多々あるんで、その誤解を解く鍵を提供できればすっかり違ってきますよ。
米田 その通りです。
城内 外国に行く度に、一般レベル、教養人、そして政府関係者まで、日本に対する期待は凄く大きい。
 中国は中小の国々に至るまで資金を出して中国人の労働者つけて箱ものをどんどん建ててしかも低利だけどしっかり利息もとっている。しかしその国の国民は、政府の建物が建っても私には関係ないって言うんです。日本はきめ細かく、病院や障害者の為の学校や、一千万円位の少額案件でもJICAの職員などが行って丁寧にやっています。向こうの政府関係者も日本式の有効性は十分分かっているんですが、中国はハイリスクだけどハイリターンだから惹かれてしまう。
 でも例えば東南アジアは間違いなく中国に対して警戒しています。日本の方が良い人たちだなって思っているし軍事大国になるとは思ってないし。だから可能性は十分あります。日本の工夫が少し足りないんです。
 歴史認識は色々ですから相手の立場を完全に否定はしませんけれど、日本の歴史認識の立場だってあります。加えて一番大事なのは事実ですね。虚偽を捏造されたらほっとけません。
米田 私も国会議員のときから強調してきたんだが、きちっとした情報発信の体制を作るべきだね。
城内 安倍外交は前の民主党政権や一時期の自民党政権の外交と違って、明確に国益という視点に立っています。例えば外遊に日本企業を同行させて首相自身が積極的に売り込むなど、普通の国が普通にやってきた事をやるようになりました。別にえげつない事をする必要はないが遠慮する必要もないんです。欧州列国並みに淡々と積極的な外交活動を展開して言うべき事を言えばいいのです。
 憲法改正も集団的自衛権の問題も世界の国が普通にやっている事をやるためのことですからよく議論をして、気が付いてみれば日本が真の独立国になっていて、アメリカとも対等に物が言え、真の友好関係が世界中の国と結べるようにするのが私は大事だと思います。

【集団的自衛権についての誤解を解く】

米田 集団的自衛権の必要性が中々一般国民には理解されない。特にいわゆる左翼勢力が、地球の裏側までアメリカに付き合って戦争に行く法律だなんていう子供じみた説明をしています。
 今の周辺事態安全確保法では、米軍兵士が北朝鮮領海で船沈められて浮いていても救援できない。私が国会議員の時にどうしたら救援できるかという議論があったが、現行法制では北朝鮮政府の了解を得るっていうんだからもう漫画だ。
 こういう事を国民に正面から言う。このままでは尖閣だって有事になっても米軍と充分な共同作戦が取れないんだ、だから日本の為なんだという説明をしないと変な宣伝に騙されるわけだよ。
城内 やっぱり国民に分かり易く説明することが優先ですね。最終的に国民の生命と財産を守るためのものだということを、きちっと説明していかなければなりません。憲法改正についても集団的自衛権についても、どうしても時間かけてやらざるをえないんじゃないか。あまり性急にやって理解得られないまま突っ走らず、国民の前で議論広げてやって行くべきじゃないかと私は考えています。

【今後の抱負について】

米田 貴方がこれからもっと大きく飛躍する事を期待してます。最後に一人の政治家としての今後の抱負を語ってください。
城内 日本の精神的な価値観、日本食も含めてですが、日本の古い文化からいわゆるポップカルチャーも含めて、これらが外国人に受け入れられてきたのは何故だろうと考えるんです。一九世紀、二十世紀型の物質文明時代を乗り越えて、精神的なものを求める大きな流れがあるのではないか。精神的なものも含めて日本の文化、価値観は世界にもっともっと通用するのではないか。
 日本は個人プレーだけじゃなくてみんなで協力して良いものを早く作るっていう愚直な国民性を持っていると思います。しかし更にもっと原点に立ち返ってみると大量消費社会向けのやり方だけでなくて、環境や命、平和の構築ということも含めてこれからの時代を築いていく価値観が日本の中にある事に気づきます。だから日本は遠慮せずに日本的な価値観と発想をもっと世界にアピールする。軍事大国にならずに、精神大国を目指す、あるいは日本のルールを世界の基準にしていくという方向を目指していけばいいんじゃないかと考えているところです。